口腔癌|治療案内

PET-CTによる口腔がんの再発・転移の早期発見

がんを見つけるための最先端医療

がん細胞は通常細胞に比べて、約3~8倍のブドウ糖を消費する性質があります。

PET(ポジトロン放出型断層撮影)検査はこの性質を利用し、ブドウ糖に似た検査薬(FDG)に目印を付けて体内に注入し、その集まり具合を検出して診断する最先端のがん画像診断です。この放射性薬剤(FDG)は、がんの活性度に応じて、がん組織に取り込まれPET画像で高度に集積したがん病巣は、発育速度が早いなど、がんの性質も推定できます。従来のCT画像が病巣の位置、形、大きさなどを映し出す「形態画像」であるのに対し、PETは病巣の代謝機能の活性をとらえる「生化学的画像」です。

がんの発生しやすい全身の躯幹部の画像をポジトロンカメラと呼ばれる装置で一気に撮るのがPET検査です。がんの再発や転移など、一度の検査で全身の広がりが観察できることもこの検査の特徴で、適正な診断・治療に結びつける役を果たします。これにより、従来検査では発見が難しかった小さながんを検出することができるのです。

我が国でもがんの臨床になくてはならない先端技術として急速に普及し、がん診断の新兵器と呼ばれております。

昭和大学歯科病院では、口腔がん患者さまのリンパ節転移や遠隔転移巣の検査に関連医療機関と連携して、PET-CT検査を導入しています。口腔がんは、首のリンパ節に比較的転移しやすく、肺や肝臓、骨への遠隔転移や、重複がん(同時に体の2か所以上にがんが発生すること)も、あります。治療後は3か月もしくは半年ごとに、1年半以降は1年ごとに検査を受けることを勧めています。

検査の流れ

  • 検査前の数時間を絶食にし、注射後は1時間くらい安静状態を保って撮像に入ります。
  • 全身のFDGの分布を20~30分かけてPET(またはPET/CT)カメラで収集し、全身画像を作成します。

※ブドウ糖製剤であるFDGの体内分布は、血糖値の影響を大きく受けますので、糖尿病のある方は予め血糖値をコントロールしておくことが重要です。

口腔の前癌病変、前癌状態の診断

前癌病変とは前癌病変(precancerouslesion)とは、形態的にみて正常なものに比べて癌が発生しやすい状態に変化した組織”で、白板症,紅板症等があります。

また、前病状態(preprecancerouscondition)とは“癌となる危険性が著しく増大している一般的な状態”で、鉄欠乏性貧血,扁平苔癬などを指します。

粘膜が紅くなったり、白くなったりしたら、口腔外科医など専門医に診てもらいましょう!

白板症

舌にみられる白板症

定義
他のいかなる疾患としても特徴づけられない著明な白色の口腔粘膜の病変
肉眼像
肉眼的には乳白色の境界明瞭な病変で、単純な白斑から、紅斑やびらんを含むもの、隆起したものなどがある。
前癌病変の根拠
口腔癌の多くが白板症を随伴すること、白板症の中には悪性化するものがある、あるいは既に癌化しているものがある
白板症の悪性化率
6.8~10.9%(観察期間:6か月~26年)

紅板症(Erythroplakia)

舌の紅板症

定義
臨床的にも組織学的にも他のいかなる疾患としても特徴づけられない燃えるような赤色斑
肉眼像
粘膜の鮮紅色、ビロード状の境界明瞭な紅斑として認められ、表面は平滑であるが、中には肉芽様変化を呈したり、浅い潰瘍を伴うものもある。
前癌病変の根拠
口腔癌が紅板症を随伴すること、紅板症の悪性化するものが白板症より多い、既に癌化しているものが約半数ある。

癌の早期発見・治療(低侵襲治療)

癌の早期発見・治療

舌癌

上顎歯肉癌

口のがん(口腔癌)が、高齢化社会を迎え、増加傾向にあります。早く見つかった場合(早期癌)の生存率は90%以上であり、治療後もほとんど支障はありません。

しかし、癌の発見が遅れ、進行した場合(進行癌)の生存率は50%台であり、治療後、食べる、飲む、しゃべるなどの口腔機能に障害が残ります。最も大切なことは、早期発見、早期治療ですが、現在、口の癌の早期発見率は約20%で、約80%は進行癌として見つかっているのが現状です。しかし、口の内の粘膜変化は鏡などで見ることができ、癌になる前の状態も含め、自分で見つけることができるのです。喫煙者は非喫煙者の約7倍、飲酒する人は、飲酒しない人の約6倍、口の癌ができやすいと言われています。

虫歯やあわない入れ歯などの刺激、鉄やビタミンの欠乏などの栄養状態から生じる粘膜の萎縮も癌の発生に関係します。口の粘膜に「イボの様なもの」、「いわゆるできもの」、「しこり」、「白い部分が広がっている」、「赤くただれている」などの異常があれば、癌になりやすい状態(前癌病変、前癌状態)、あるいは癌になっている可能性がありますので、口腔外科などの専門医に診てもらうべきだと思います。

ただ、非常に長期にわたり、ゆっくりと、癌になっていく病変もあり、専門医に「癌ではない。」と言われても、きちんと定期的に粘膜をみてもらうことが大切です。

歯を磨く時や鏡の前に立った時、舌の上、横、下、口腔底、上・下の歯肉、口蓋、頬粘膜と粘膜の変化に気をつけ、「何か変だな」と思ったら、何度でも専門医を受診することが大切だと思います。

低侵襲治療を目的としたセンチネルリンパ節生検

我々の施設では、センチネルリンパ節生検の口腔癌への応用を行っています。

はじめに

腫瘍から直接のリンパ流を受けるリンパ節を見張りリンパ節(Sentinelnode;SN)とよびます。癌細胞がこのSNに転移を形成し、さらなる進展をきたすという仮説が、SN理論です。この仮説が成立するならばSNに転移のない症例は、リンパ節転移をきたしていないものと判断され、リンパ節郭清が不要であると考えられます。近年、様々な分野でSNを指標とした転移診断に関しての良好な成績が報告されていますが、口腔癌に関する臨床研究は、いまだ数施設において深索的に行われているにすぎません。

口腔癌におけるSN同定の実際

SN生検におけるトレーサーとして色素と放射線同位元素(99mテクネシウム)標識コロイドを用います。手術前日に腫瘍周囲4箇所にインスリン注射器で99mTcスズコロイド(0.4ml:74MBq)を行い、注入2時間後、センチネルリンパ節をリンパ節シンチグラムで撮影、検出します。撮影時、原発巣周囲注入部位からのシャインスルーを除去するために鉛板を置き、また、描出されるセンチネルリンパ節の位置確認のために、オトガイ部、鎖骨胸骨端、肩峰端ならびに下顎角部に10ml(約0.1MBq)の注入液を注射針のカバーに入れた指標を置きます。手術当日は、手術開始時に2%パテントブルー溶液を4箇所に分けて原発腫瘍周囲の粘膜に99mTcスズコロイドと同じ部位に緩徐に注入します。続いて前日に同定したSN相当部の頸部皮膚に切開を加え、皮下組織の剥離を進め青染されたリンパ管ならびにリンパ節を同定しガンマプローブ(NeoProbe2000:センチュリーメディカル社製)を用いて確認し、摘出を行い術中迅速診断を行います。

  • 口腔癌症例のリンフォシンチグラフィー
  • 色素法によるSNの染色
  • ガンマグローブによるSNの同定

術中迅速診断の実際

センチネルリンパ節は半割し、病理部で、最大割面での標本が作製され迅速病理組織診断が行われます。診断結果が腫瘍細胞陰性の場合には、さらに200?m間隔の準連続切片が作成され、HE染色とサイトケラチン染色による微小転移診断を行います。また、半割した他方のリンパ節はホノジナイズ後RNAを抽出し、SCC抗原をマーカーとしたリアルタイムRT-PCR法による術中迅速遺伝子診断を行います。

術中迅速診断の流れ

口腔癌におけるSN生検の展望

SNが転移診断の標的として利用できれば、SNに集中した精査を行うことで、従来よりはるかに高感度な微小転移診断を効率的に行うことができると考えられます。口腔癌のリンパ流は、個体によるバリエーションや癌の発生部位や組織型の違いによって、その転移部位や頻度が異なります。しかし、SN転移状況に応じて個別的な郭清範囲を策定することは可能です。口腔癌におけるSN生検の臨床応用は、今後、拡がりをみせると考えられますが、術中微小転移診断の正診率の向上などの点でさらなる検討が必要であると考えられます。

口腔癌に対する癌免疫療法

当科では東京大学医科学研究所先端診療部の技術を活用したセレンクリニック(リンク)と連携して口腔癌に対する免疫療法を行っています。

自己がん組織樹状細胞療法とは

樹状細胞とは、免疫の中心的な働きをつかさどるリンパ球にがんという敵を認識させ、攻撃するように指令を出す細胞です。リンパ球は通常、体内に再建などの敵が侵入すれば、敵とみなし攻撃、撃退します。しかし、リンパ球はがん細胞を敵と判断できずに見過ごすことが多いのです。自己がん組織樹状細胞療法は、樹状細胞に患者様のがんの特徴を強く認識させることで、リンパ球にがんを効率よく攻撃させるものです。

治療の流れ

採血は血液成分分離装置という透析機器に似た装置を用いて、末梢血から樹状細胞のもととなる細胞を採取する方法を用います。採血時間は患者様の体の状態により調節しますが、3時間ほどかかります。採血は、当日患者様の血液検査の結果を診てから行います。

対象

白血病など血液のがんを除く全てのがん、口腔癌などの固形癌が本療法の対象になります。樹状細胞療法は、まだ確立された療法ではありませんが、世界中で治療の選択肢がなくなったがん患者様を対象とした臨床報告(論文)がされています。

治療技術

東京大学医科学研究所先端診療部(山下直秀教授)では、進行した悪性黒色腫(皮膚がんの一種)、または甲状腺がんの患者様を対象として樹状細胞療法の臨床研究を行っており、双方のがんで約3割の症例において、がんが退縮する、あるいはがんの進行が停止するなどの反応を確認しております。

サイバーナイフによる口腔がん治療

体にやさしい低侵襲、最新治療

昭和大学歯科病院口腔外科では、口腔がん治療において、関連医療機関と連携し、手術に耐えるだけの体力がない高齢者の患者様やその他の理由で手術ができない患者様などに対して、サイバ-ナイフによる治療を行っています。

サイバ-ナイフとは定位放射線治療を行う放射線照射装置の一つであり、精密に放射線を照射できる最新鋭器です。1992年、アメリカで開発され、そのロボットアームの動きは、巡航ミサイルが動く標的を追跡して撃ち落とす軍事技術を応用しており、照射の誤差は1ミリ以内と精度が高くメスのような鋭い切れ味の「電脳ナイフ」が名前の由来です。

口腔がんに対する放射線治療としては、通常の放射線では、腫瘍だけでなく正常な細胞も破壊してしまいますが、サイバーナイフは患部のみに放射線を照射し、腫瘍を壊すことができます。周りの正常組織を守りながら、直径3cmを超える腫瘍にも適応できます。また、「病変追尾システム」により、コンピューターが常に患者の位置を認識し、1cm以内の動きであれば病変を追尾し治療できることから、頭部の強固な固定がなくても、高精度の放射線治療ができる装置として開発されました。また、最大1200方向から照射でき、病変部の形状に一致した安全な治療が可能となっています。サイバーナイフによるがん治療では、通常の放射線治療に比べ、長期の入院や通院が不要です。また、治療にメスを使わないので、全く痛みはなく、傷跡も残らず、体に大きな負担をかけることもありません。

口腔がんに対する適応などを、相談して治療を行います。

治療の流れ

  • CTにより腫瘍の詳細な情報を撮影し、コンピューターで、腫瘍の相対的な位置情報を記憶します。
  • 医師がCTのデータをもとに治療計画を作成し、シミュレーションを行います。
  • インフォームドコンセント(検討された治療法を説明し、理解頂いた上で承諾を得ます)を行います。
  • コンピューターがふたつの画像を瞬間的に比較して病巣位置を認識し、ロボットアームに病巣の働きを追いかける指示を出します。サイバーナイフ治療では、治療台に横になって平均1時間程度のX線を照射すれば終了です。仰向けなっているだけです。照射直後でも普通に食事や会話が出来ます。
  • 治療後、ほとんどリハビリに時間をかけることはありませんが、口腔がんの場合には、口内炎や咽頭炎ができ、食事しずくなることがあります。場合によって、口内炎コントロ-ルのために入院が必要になります。

口腔癌に対する抗癌剤感受性試験

当科では、個別化治療の一つとして、各々の癌に対する抗癌剤感受性試験(CD-DST法)を応用しています。

癌にも個性があります。AさんとBさんにできた癌は、決して同じ性格を持った癌ではないのです。そこで、各々の癌に対して、効果のある抗癌剤を見出そうとするのが抗癌剤感受性試験です。

具体的には、患者様から癌の一部を取り、その組織をシャーレーで培養して、そこに抗癌剤を入れます。そうすると良く効く抗癌剤を加えたシャーレ中の癌は死んでしまいます。この試験で癌を殺すことができなかった抗癌剤は通常使いません。培養している状態の癌に効かないものは、実際に患者様に投与しても、まず効かないと考えられているからです。でも、シャーレの中の試験で癌を良く殺したからと言っても、患者様の癌細胞を全て殺すわけではありません。体が弱っている人や、薬が体に入っても癌のところまで届かなかったりする場合があるからです。しかし、抗癌剤の副作用は強いことから、効かない抗癌剤なら、投与しない方がましと言う考え方もあります。

口腔がん.com

詳しい口腔癌の情報は『口腔がん.com』をご覧下さい。