口腔癌|親知らず抜歯

「親知らず」抜歯時に知っていた方がよい情報

抜歯治療の流れ

 

  • 初診日:診査診断・抜歯の予約 ※腫れている場合は、薬で腫れをおさえてからの抜歯になります。
  • 抜歯当日:予約時間に余裕をもって来院ください。
  • 抜歯翌日:傷口の消毒
  • 抜糸:1週間後を目安に糸を抜きます。

治癒を待って終了:洗浄・消毒等で経過をみます。

親知らずとは

親知らずは、“第3大臼歯”または“智歯”とも呼ばれます。通常は、10代後半から20歳代に萌出しますが、40歳以降になって生えてくることもあります。この場合、歯周病に罹患したため、歯茎(実際には歯槽骨)が痩せることで、生えてきたように見えることが多いです。

“親知らず”の語源は、その生えてくる時期によると言われています。昔は、この歯が萌出する頃には親元を離れており、“親が知らない時に生えてくる歯”と言うことから、一般的に呼ばれています。ちなみに、英語では“wisdom tooth”と呼ばれ、直訳すると“知恵・分別”となり、物事の分別がつく頃に生えることから、このように呼ばれたようです。

親知らずの発生

親知らずがしっかり生えている人は目で見て確認できますが、現代人では顎が小さくなっている傾向があるため、歯の生えるスペースがなくなっています。その場合、歯茎や骨の中に埋まっていることが多いことから、レントゲン写真を撮って確認する必要があります。一般的に、親知らずのある・なしは親の遺伝によるところが大きく、中には親知らずが元々ない人もいます。ある本数も個人差があり、4本の人もいれば、2本だけの人もいます。

抜歯の必要性

親知らずは必ず抜歯しないといけないという訳ではありません。ちゃんと上下の親知らずで咬んでいる場合は、抜く必要はありません。また、顎の骨に深く埋まっている歯に関しても必ずしも抜歯とは限りません。しかし、何度も腫れを繰り返していたり、症状がなくても今後腫れる可能性がある歯や、矯正治療を考えている人は抜歯した方が良い場合があります。その他、年齢を重ねるに従い、全身的に基礎疾患を患う可能性があることや、女性は妊娠した時に、腫れたり痛みが出ることがあり、抜歯する際に注意が必要となりますので、抜歯することをお勧めします。

抜歯の時期

基本的に腫れた状態の時に抜歯はしません。麻酔の効果や抜歯した所の治りが非常に悪いことがあり、逆に治療期間が長くなってしまいます。その場合、薬で腫れが治まったのを確認してから抜歯します。焦って抜歯すると、良いことはありません。特に抜歯の時期は決まってはいませんが、親知らずは10代後半から20代前半で生えてきます。これは歯の根が完成することで、歯が出てきます。多くはこの時期に抜歯します。しかし、矯正治療などをしている場合は、もう少し早い段階で抜歯をすることがあります。親知らずが生える時には大きな力が加わるため、その力で歯並びが崩れてしまうことがあるため、主治医の先生に相談しましょう。

必要な検査

親知らずは歯茎の中にもぐっていたり、骨の中に埋まっていたり、口の中の深い一番奥の部位に生えているので、その位置を正しく把握しなければいけません。そのため、レントゲン検査、場合によっては歯科用CT検査を行います。

歯科用CTによる画像検査

3次元画像診断装置による抜歯術に先立つ親知らずの位置の精査。医科用CTよりも被爆量が少なく、解像度が高いものを採用しています。

抜歯した方が良い親知らず(下顎)

チェックリスト(1個以上当てはまる方はお近くの歯科医院を早急に受診する必要があります)。

1度でも腫れたり、痛みが出たことがある

深い虫歯になっている
歯茎から少しだけ歯が見えている 手前の歯に食い込んで、その歯が虫歯になっている
生えている向きが正しくない(頬や舌に食い込んでいる) 治療が難しいまたは、予後が望めない
矯正治療前や治療後または、治療中 歯が挺出(伸びてきて)してしまっている
よく頬や舌を咬んでしまう  

抜歯の難易度の分類

親知らずが埋まっている深さ、奥行きを示す分類として、Pell and Gregory class(ペルグレゴリー分類)があり、傾いた歯の深さと奥行きを示す分類として、G.B.Winter class(ウィンター分類)があります。

Pell and Gregory class(ペルグレゴリー分類)

深さの分類:難易度低→高

下顎枝(赤線部分)の立ち上がりより、手前に歯がある方が難易度は低い

高さの分類:難易度低→高

下顎枝(赤線部分)の高さより、高く歯がある方が難易度は低い

G.B.Winter class(ウィンター分類)

深さの分類:難易度低→高

第2大臼歯と下顎枝前縁(赤線部分)の間のスペースがある方が難易度は低い

高さの分類:難易度低→高

第2大臼歯の咬合面(赤線部分)に対して高い位置にある方が難易度は低い

親知らずを抜歯時の痛み

抜歯前に親知らずの周りに麻酔をしますので、痛みはありません。 ただし、押される感覚は残ります。 万が一、抜歯中に痛みを感じた場合は、適宜麻酔を追加していきます。

当科で採用している麻酔方法

当科では、静脈内鎮静法という、特殊な麻酔方法も採用しています。精神的緊張を和らげ、安全・快適に治療がうけられ、歯科治療に対して恐怖を感じる患者様が抜歯をする際や、難易度の高い抜歯を行う患者様に多大な精神的ストレスを及ぼす可能性がある場合、おこりうるストレスを大幅に軽減できる麻酔法です。

また手術中は心電図や血圧計といった生体モニターを使用し、治療中の健康状態を専属の麻酔医がチェックしています。術中のバイタルサインの管理や前腕部より静脈路を確保しているため術中の患者様の急変に速やかに対応できます。

抜歯の費用

保険がきくものですと、1本あたり5,000円前後です。

抜歯にかかる時間

だいたい30分程度ですが、歯の状態によっては1時間くらいかかる場合もあります。抜歯の難易度や患者さんの希望により、特殊な麻酔法を併用する場合もあります。

抜歯後の痛みや腫れ

個人差がありますが、大体の場合は腫れることがほとんどです。歯茎を切ったり、骨を削って抜歯した場合は、体の正常な反応として腫れますので心配はいりません。 痛みは1~2週間くらい続くこともありますが、処方された痛み止めをのんでいただければおさまる程度です。

抜歯後の注意点

当日から翌日くらいまでは、出血や痛みの原因になりますので、強いうがい・飲酒・入浴(シャワー程度は可)・激しい運動は控えてください。 処方された薬は指示通り服用してください。

抜歯後の代表的なトラブル

まれに抜歯後ズキズキ痛み出すことをドライソケットといいます、骨がむきだしになってしまっている状態で、歯を抜いた穴に軟膏を填入し、抗生剤・鎮痛剤を投与し通常よりは長くなりますが、治っていきます。 また、神経と接している歯を抜いた場合は、一時的に知覚鈍麻の症状が出る場合がありますが、その場合は薬を処方し、治りを待ちます。

上顎親知らずの抜歯

上顎の親知らず(赤点線部分)ですが、下顎の親知らずと決定的に違うところは上顎洞(緑線より上方)と近接しているという点です。上顎洞とは、副鼻腔と言われ、鼻腔に交通している空洞の一つです。すなわち下顎の親知らずとは違った注意を要する手術が必要となります。

抜歯した方が良い親知らず(上顎)

チェックリスト(1個以上当てはまる方はお近くの歯科医院を早急に受診する必要があります)。

1度でも腫れたり、痛みが出たことがある

深い虫歯になっている
歯茎から少しだけ歯が見えている 手前の歯に食い込んで、その歯が虫歯になっている
生えている向きが正しくない(頬や舌に食い込んでいる) 治療が難しいまたは、予後が望めない
矯正治療前や治療後または、治療中 歯が挺出(伸びてきて)してしまっている
よく頬や舌を咬んでしまう  

抜歯後の代表的なトラブル

 

前述した、上顎洞は親知らずの直上に位置しているために、親知らず抜歯後の上顎洞への穿孔、抜歯した歯の上顎洞への迷入、上顎の歯は下顎の歯に比べ歯根が細いため、歯根の破折等のトラブルが予想されます。いずれの場合も、発生した場合、適切な処置を行い、治りを待ちます。

特殊な抜歯法(2回法)

昭和大学歯科病院口腔外科では、抜歯後に起こりうる重篤な合併症を予防するため、歯の根が神経に近接している場合、必要があれば、2回法智歯抜歯術を採用することがあります。しかし、適応が限られているため、一度担当医とご相談下さい。

2回法智歯抜歯術

歯は骨と歯周組織と呼ばれる、結合組織で骨の中に保たれていますが、徐々に成長している組織であるため、矢印の方向に成長していきます。ただし、親知らずの手前には歯が存在するため、その成長はそこで保たれています。(青矢印)親知らずは隣の歯に当たっているため、これ以上進むことはできません。(赤矢印)

 

そこで今回の2回法智歯抜歯術は、一回の処置では神経損傷のリスクが伴う抜歯の場合、1回法同様に歯の頭と根を二つに分けます。

 

1回法と違う点は、歯の頭を抜去したあと、あえて、歯の根を残存させることにより、矢印の方向に歯の根が進み、神経から歯を遠ざけることができます。(緑印)

 

歯の根が神経より離れたことをレントゲンやCTで確認した後、歯の根だけを抜歯することで、1回法で抜くよりもより安全に抜歯することが可能になります。

 

【適応】

・ 水平(横向き)に存在する、下顎の親知らず
・ 親知らずの歯根(1/2以上)が神経と明らかに接触している場合
・ 親知らずが骨の深い所に存在している場合

【偶発症・合併症】

・ 残した歯根への感染
・ 残した歯根の冷水痛
・ 残した歯根が移動しない(根の強い弯曲や骨癒着)